腕を掴まれて、ベッドに縫い付けられるように押さえられてしまった。
「い、いないよっ、嘘だよっ!」
「…嘘?」
「そうっ!居るわけないよ生まれて15年間いたことないです…!」
それに今日2度目の失恋のようなものをした。
別にずっと好きだったというわけじゃないけど、また声をかけてくれたときは少しだとしても胸が高鳴った。
変わらないからこそ、変わらない笑顔で名前を呼んでくれたからこそ。
「むしろ失恋してっ」
「…お前、好きなやつ居たの?」
若干緩められたはずの力がぐっと込められた。
サラッと流れる黒髪の隙間から覗く瞳。
二重ラインが綺麗に入っていて、鼻も高いし唇も薄いし。
ぽーっと見惚れてしまいそうだった。
「とっくに振られてるから…!なんかそれでまた感傷的になってるだけで、でも全然へーきっ!」
「…ふーん」
つまらなそうな顔をして身体は離された。
な、なんだったんだろう…。
掴まれていた手首が熱い。
「そいつ、なんて名前?」
「え、橋本…恭平…」
つい反射的に答えてしまった。
スッと立ち上がった兄は「覚えとく」と言って、部屋を出て行った。
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