「良かったね柚。お兄ちゃん欲しいって昔からずっと言ってたもんね」


「そうなの!一緒にゲームしたりお買い物したり!あっ!挨拶の練習しなくちゃ!」



名前は自分で実際に会ったときに聞くから言わないでと、父にはずっと口止めをしてもらっていた。

そうしてようやくこの日がやって来た。

今日は学校が終わったらまっすぐ家に帰ろう。


そして出迎えるのだ、お兄ちゃんとなる人を。



「真崎、お前顔が緩んでるぞー」


「へへっ、バレましたー?」


「中学から赤点常習犯なんだってな。しゃきっとしろ!」



担任にそんなこと言われたって全然平気だった。

今の私は怖いものもなく、恨みや妬みという憎悪もなく。


穏やかに流れる川のような気持ちで1日を過ごしていた。



「ねぇ、今日あたし湊先輩と話しちゃったの!」


「ズルーい!なんであたしも呼んでくれなかったのよっ」


「だってせっかくのチャンスなんだもーん」



みなと先輩…?

あぁ、あの人か。
いつも女子に囲まれている3年生。