───それから数日経って、風邪を引いたのは私でした。
「この季節の風邪が一番厄介だって言ってたのは誰だったっけ?」
「す”み”ま”せ”ん”」
「俺、受験生なの。わかる?暇じゃないんだよね」
「…は”い”」
ずびっ。
鼻水が止まらない、そして両親不在。
月に1度、父と母は決まった休日に2人で出かけるようにしているらしく。
それはお付き合い当初から続けていることらしい。
「うわ、38.2度って…。完全に風邪じゃん」
「俺が看るので行ってきてください」と、お父さんへ言った兄。
その通り看病してくれるらしいのだけど、私から離された体温計を見るとため息を吐いた。
既に冷めきった冷えピタをペリペリと剥がして、少し雑に新しいものを貼られる。
その冷たさに「あうっ」と変な声が出た。
「食欲は?」
「…ない」
「せめて水分だけでも取らなきゃでしょ。ゼリーとかいる?」
「…いらない…ダルい……つらい…死にそう」
「…もうね、すっごいめんどい」
昨日の夜から続いていた咳は今朝には治まったけれど、その代わりに熱が出た。
そして体の怠さと眠気、食欲の無さ。
そんな私を見つめて「これ病院行った方がいいんじゃないの」と、彼は呟いた。



