「ふっ…アホ面」
「…へ…?」
この笑顔を見たのは2度目。
それも全部今日だった。
少し意地悪に眉を寄せて、貼り付けたようなものじゃなくて。
これがこの人の本心からのものなんだろうなぁって、すぐに分かってしまうくらいの。
「まぁでも、カツ丼食べてるお前思い出したらその心配もないか」
「あっ、あれはお兄ちゃんがあんなこと言うから…!」
「まさか本当に完食するとは思ってなかったよ。お前の胃どうなってんの?ブラックホール?」
そのときも兄は手に顎を乗せて楽しそうに見つめていたっけ。
たまに目が合うと優しく細めてくれて。
そんなものがまっすぐに見れなかった。
だから隠すように食べることに集中していたら、気付けば完食してしまってた。
「というか早く着替えなきゃ風邪引いちゃうよっ!!
この季節の風邪が一番厄介なんだからねっ!」
「湯冷めしちゃったなぁ。…一緒に入る?」
「なっ!!なんと…!?」
「じょーだん」
ヒラヒラ手を降って階段を降りて行ってしまった。
ポツンと取り残された私は、その階段をボーッと見つめる。
一緒に入る………?お風呂に?私が?
羽柴 湊と………?
「っ……!!」
ボンッ!!!
そんな爆発音は私からだった。



