「ふー、美味しかったね!」
「お前このあと母さんの夕飯食べれるの?」
「あっ……た、食べるよ!!」
そうだ、忘れていた。
てっきりこのまま帰ってお風呂入ってゴロゴロのつもりだった…。
ぐっとガッツポーズを握って、涼しい風が吹く帰り道を兄と並んで歩く。
「あ!あそこがお父さんが昔から通ってる床屋さん!絶対最後はオールバックにセットされちゃうの!」
「ふっ、そんなとこある?普通」
「それがあるんだよー。近々また行くだろうからそのとき分かるはず!」
それであそこは未だに私が一球も打てないバッティングセンター。
それからそれから安さが売りだけの中華屋さん。
私が育った町を片っ端から教えた。
「…お兄ちゃん、ごめんね」
「…なにが?」
玄関前、私は足を止めて若干頭を下げた。
無理矢理連れて来てしまったから、だからそこまで嬉しくなかったかもしれない。
本当はもっと実用性のあるお礼の方が良かったかもしれない。
「…ラーメン、本当は嫌いだった…?途中からあまり楽しそうじゃなかったから」
「…ああいう常連客ばかりの店に入ったの初めてでさ。
まぁ、あまり慣れない場所だなぁとは思ったけど」



