「実はねー、…じゃんっ!!」


「…おー、まぁお前にしては良い方なんじゃない?」


「良い方っていうか小学生以来なの!!こんなキラキラした点数っ!
ありがとうお兄ちゃんっ!!本当に!ありがとうっ!」



机に並べたテストを見せて、ブンブンとその手を握って大げさに握手。

「それ逆に悲しくならない?」と笑ってる兄はどこかホッとしているようだった。


それもそうだ。

妹が馬鹿だと兄に迷惑しかかけないのだから。



「それでですね、微力ながらお礼をしたくてですね…!なにか欲しいものとか好きなものある?」


「特にないけど」


「ええっ、そんなこと言わずに!!今一番欲しいものとか!!」



欲が無い人なのかな。

食べたいものとかゲームとかCDとかなら私も用意出来るのに。

それにこれが今の本題だ。



「今一番欲しいもの…」



どこか窓の外、一点を見つめた兄。

なんでも用意出来る?と呟いた。



「任せてっ!」


「じゃあ───…父さん」


「……え…?」



小さな小さな声だった。


その“父さん”を指す存在はきっと、私の中に居る父親とは絶対に違うこと。

それだけは分かってしまった。