そーっと階段を降りてリビングを覗いてみる。



「なにか飲む?麦茶か紅茶かコーヒー…あ、オレンジジュースもあるけど」


「オレンジジュース?湊飲むの?意外~」



それは私のだよ。

ていうか、いつの間にかこんなにも普通に我が家のように扱っちゃって…。

まぁ再婚ってそーいうものだから文句は言えないけどさ。



「これは妹の。本当あいつお子ちゃまなんだから」



クスッと男は笑っている。

あの人っていつも学校ではにこやかで貼り付けたような笑みをしてるのに、こうして吹き出すように笑うことも出来たんだ…。



「ねぇ、───柚」



はっ!バレてた!?


盗み聞きは関心しないよ、なんて笑っているその目は笑ってなんかいない。

それはたぶん私だけが知ってることだ。



「お、おかえり。今日は早いんだね…彼女さん…?」


「生徒会の仕事も無いしね。それに俺は今年受験だからさ」



“彼女”に対する返答は無い。


スムーズにグラスに麦茶を注いで、スナック菓子と共にお盆に乗せると、私の横を通り過ぎてゆく。

女からふわっと香水の匂いが香った。



「あ、そうだ」



そして階段の途中で振り返る。