ぐいぐいと引っ張り合い。
知らない、そんなの知らない。
橋本くんには悪いけど、私はもうあなたのことはずっとずっと忘れていた。
“橋本くん”って呼び方だってその証拠だ。
「ちょっと本当にっ!これは大事なものなのっ」
───ビリッ。
両サイドが引き裂かれるように。
中から飛び出したカップケーキは見事に地面に落ちる。
生徒達がトイレに行った後の上履きで歩く床の上、それはポトンと落ちて転がった。
「あぁぁぁぁぁ!!!!」
叫んだところで時間は戻らない。
そうか、悪魔のメッセージはこのときの為だったのか。
「ごめん真崎っ!でも気持ちだけは伝わったから…!俺ちゃんと考えるよ…!!」
「ぁぁぁ……」
チョコチップ取れちゃってる…。
さすがにもう渡せない。
それに袋も真っ二つだ。
神様、私が一体なにをしたというのでしょう…。
「板前。お前、本当にろくなことしないね」
思えば、ここは彼と初めて話した場所だ。
お兄ちゃんが来るからって廊下を全速力で走ってた私に『廊下は走らない』と、注意をされて。
なにこの菩薩みたいな人…なんて思ったっけ。



