「うわ、それ全部お兄ちゃんに?」


「そーなのっ!助けて遥、前が見えない、」


「わっ、おっとっと…」



私だってちゃんと準備してるのに、これを渡す方が緊張する。


だってこれは全部本命チョコだ。

みんな顔を赤くさせて、恋する女の子の顔で私にお願いをしてきた。

自分では勇気が出なくて渡せないからって。



「それで?あんたはどうするのかなー?」


「…う、…義理として渡します…」


「───あたしは応援してるよ、柚」


「っ…!わっ、ちょ、落ちるっ!」



コソッと耳打ちをされ、危うく女の子達の気持ちを落としそうになった。


私はどうやら隠しごとが下手なようで。

またお兄ちゃんと暮らすことになったと報告したとき。


遥は『前々から思ってたんだけどさ』と前置きをして私に言った。

柚、湊先輩のこと好きでしょ───?と。



「あ、お兄ちゃん。これあげる」



うーん、もっとナチュラルに渡す方がいいかなぁ?



「あ、そうだ。これ余ったからあげるねお兄ちゃん」



そもそも私からって言わない方がいいかもしれない。

なんて、昇降口で渡す練習。