「はい柚ちゃんっ!ここで流し入れて!スピード勝負よ!」


「あいあいさ!わっ、お母さんこれ中々均等にならないっ!」


「そうよー?お菓子作りは難しいんだから」



やっぱり手作りに挑戦するんじゃなかったかなぁ…。


今までは母親が居なかったから、買ったものを友達に渡していたけど。

でも今年からは料理上手な母がいるから。



「できたっ!」



チョコチップ入りのカップケーキは見事完成されて、ずらっとテーブルに並んだ。

可愛くデコレーションをしたけど明らかにチョコが垂れてしまって悪魔のメッセージみたいになってる…。



「…やっぱりお母さんにやってもらった方が良かったかも」


「大丈夫!気持ちが一番よ!」



そんなバレンタインは初めて好きな男の子に渡す。

本命だとしても義理になってしまうチョコは、それでも気持ちを込めて一生懸命作った。



「真崎さーん!これ湊先輩に渡してっ」


「わっ、」


「私もよろしくっ!手紙も忘れないようにねっ!」


「ちょっ、」


「出来れば食べてるとこ写真撮ってきて!」



だからそれは盗撮っ!!


2月14日の朝、両腕に抱えたチョコで目の前が見えなくなるのは初めてだ。

それも全部羽柴 湊へと頼まれたもの。