「ふはっ!…お兄ちゃん間抜け面~」



うそ。

本当は顔なんか見れない。


だから間抜け面をしてるかなんて知らない。

それに元から整ってるから、例え間抜け面だとしても間抜け面にはならないに決まってる。



「…返事は要らないよ。ただ伝えたかっただけだから。…ほら帰ろうお兄ちゃんっ」



その腕を引いて駆け出す。

あ、家が見えてきた。
私達の家。



「ただいまー!」


「柚っ!?」


「柚ちゃん…!!」



わっ!

お父さんもお母さんもそんなに私に会いたかったんだねぇ、とぎゅうぎゅう抱き締められる中で呟いた。



「もう苦しいっ!潰れちゃう!お母さん、私お腹ペコペコ!」


「おかえり柚ちゃんっ。今日はね、柚ちゃんが大好きなものを作ったの」


「やったぁ!」



幸せというものはきっと、誰かの苦労や涙の上に成り立っているんだ。

だからこそ何よりも特別で。


お兄ちゃんと一緒に居られるなら、私は妹でも全然大丈夫。

気持ちを伝えて、名前を呼べて、それでまた妹に戻れた。


それ以外、何を望むというの。