もう私がシャンプーを買いに行かなくても新しいお母さんが買っておいてくれる。

もうお父さんの不恰好な目玉焼きも食べなくて良くなるのだ。


それはシンプルに嬉しいし助かる。

それなのに、心から笑えてない顔が鏡に映っているのはどうして…?



「いやいや!そーいうの考えないって決めたばかりでしょ私っ!」



私のお母さんは私が小さいときに家を出て行ってしまって。

4歳から男手ひとつで育てられて。

寂しい思いもたくさんした。
お母さんを責めたこともあった。


…まぁいいか。

そんなこと、今はどうでも。



「ふー、気持ち良かったぁ」



まだ初日だったのだ。


今まで父と2人きりだった家に学校イチ人気者な生徒会長が居ることをすっかり忘れていた私は。

脱衣場の扉をガラガラガラと開いて、スポーツブラにパンツ1枚といういつも通りの開放的過ぎる姿だということ。


それすらも忘れていて。



「…………」



脱衣場を出るとリビングに繋がっている。

少し殺風景なキッチンがあって、ちょうど冷蔵庫付近にて麦茶を飲んでいた悪魔が目の前。