「…ごめんね、柚。誕生日を選んだのは……こんなにも最低な母親だとしてもあなたに覚えていて欲しかったから」
彼女はもう一度「ごめんなさい」と、丁寧に頭を下げた。
お兄ちゃんの本当のお父さんが息子と妻を守ったように、この人も私達を守ってくれたのだ。
それが子供にとって深い深い傷になろうとも、それでも本当のことは確かにあって。
「…お母さん、今日のシチュー…すっごく美味しいよ…」
「そう、…良かった」
きっとお母さんの料理は味が少し足りないの。
なんていうか塩分が。
でもほら、今は丁度良くなった。
「…柚は学校で好きな人とか居ないの?」
お母さんこういう恋バナってものを一度してみたかったの───と。
少女のように笑った母は、布団に眠る私へと寝返りをうった。
寝たふりを決め込もうかとも迷ったけれど。
実の母と過ごす日々は空白が多すぎて、どんな話だとしても無視することが出来ない。



