「なにかあったのか?」と、ギリギリで耳に入ってきたお父さんの問いかけに兄はどう答えているのだろう。


なにかあったのはお父さんでしょ…。
オールバックになってる。

床屋さんでやっぱりセットされて来ちゃったんだね…。



「…父さん、その顔でこっち見るのやめてもらっていい?顔と髪型があってなくてお茶飲めない」


「素晴らしいだろう!実は父さんな、もう何十年通ってる床屋があるんだ。良かったら湊も───」


「いやそれだけは勘弁して」



そんな会話を背に部屋へ向かって、そのままベッドへダイブ。



「…むり、話せない、顔見れない…今まで通りに接せれないぃぃっ」



枕に顔を埋めてジタバタジタバタ。

もしここがプールだったならば、誰よりも先へ進んでいたことだ。



「キス……しちゃったぁぁっ」