───コンコン。



「…どうぞ」



入って来たのはお母さんではなく、黒いTシャツにグレーの夏用スウェットパンツ姿の兄だった。

お風呂上がりの姿だ。


この姿を写真に撮って来てと言われていたけど、やはり誰にも見せたくないとも思ってしまう。



「こちら柚スペシャルになりまーす」



あ、ふざけてる。

その柚スペシャルはレアものだから簡単には用意出来ないのに。



「…お母さんがホットミルク準備してくれてるのに」


「俺がこっちの方が柚は好きだよって言っておいた」



それもそうだし、真夏にホットミルクっていうのも中々勇気がいる。

お母さんは少し天然なところがあるんだなぁと知った近頃。



「俺も食べていい?柚スペシャル」


「うん…」