突如スッと目の前の笑みは違ったものに変わる。
どこか目が据わっていて意地悪に唇の端を引き上げて、そして近付いてくる。
「え、…お、お兄ちゃん…?」
じりじりと近付いてくるから、反射的に後ろへ退くしかなくなる。
トンッと壁に到着───かと思えば。
ドンッ!!!
「っ…!」
まさかの壁ドン。
いきなりの壁ドンがイケメンな兄から食らわせられる。
え……どーいうこと…?
「さっきまではごく一般的な良いお兄ちゃんの例ね」
「……へ…?」
「生憎、俺はそうなるつもりもないんだ」
ニコッと笑った顔がとてつもなく黒い。
スッと今度は手が伸びてきて、思わずぎゅっと瞑ってしまった目。
私の髪の毛を1束すくってくるくると遊んでいる。
「絶対学校ではお前と俺が兄妹だとはバレないように」
「お、お前……」
「お前みたいな馬鹿と兄妹って知られたら俺の面子が潰れるんだよね」
“お前”と、もう1度強調して言ってくる。
ばか…?……バカ……??
───馬鹿……???
あれ?ちょっと待って?これが夢…?
私いつの間にか寝ちゃってた?
部屋を案内する前に1度睡眠か何か挟んだんだっけ?



