『確か試合前の衝突事故で死んじまったんだよな。小さな子供も居たろ、息子が1人』
『息子と嫁残して…か。辛いな』
もし、それが本当だったとしたならば。
「俺もさ、ずっと空手やってたんだ。それでその日はちょうど俺の大会と父さんの試合が重なっちゃって」
その背中を黙って見つめることしか出来ない。
私はなんて恥ずかしい勘違いをしていたのかと情けなくもなった。
それでもそれがあったからこそ、こうして知らない兄の姿を見れた。
「俺がもし自分の大会を辞めて父さんの試合の応援を選んでたら…俺は今ここに居なかったよ」
ゆっくり振り返ったその人は泣いているわけでもなく、笑っているわけでもなく。
そうやって今までずっと乗り越えて来たんだろうなって。
「トラックとの衝突事故。大型が突っ込んで来て一瞬だったらしい」



