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2020年、4月。


世界的に蔓延するウイルスによって、あたしたち日本も大きな打撃を受けていた。


「紗弓、さっき学校から緊急連絡網が回ってきたわよ」


朝起きて、いつも通り制服に着替え、顔を洗うため最初に洗面所へと向かった時だった。


4月上旬のまだ冷たい水を掌にためていっていた時、ドアが開いてお母さんがそう言った。


「え?」


あたしは顔を上げて首をかしげる。


手の中にたまった水はどんどん隙間からこぼれ落ちていく。


「今日から一週間、学校がお休みになるって。3年生なのにこんなことになるなんて、不安よねぇ」


「え?」


さっきとは違うニュアンスで、同じように聞き返す。


手の中の水は完全になくなってしまったが、また水道水をすくうことはせず、洗面台の隣に掛けられているタオルで手を拭いた。


「お休みって、ウイルスのせい?」


「そうみたい。一週間っていうのも目安なんですって」


「目安って?」


「感染者数がもっと増えていったら、また休みの期間を伸ばしていくんですって」


あぁ、なるほど。


あたしはお母さんの言葉に頷いた。


それなら最初から一ヶ月休みとかにして、ウイルスが弱まったときに授業をすればいいのに。