リップが……。

律くんに気づいてほしかったリップが一瞬で落とされた……。


「な、なにするの律くん……!?」


「だから、ケチャップついてたから」


「ケチャップ!? これはリップだよ!?」


「ケチャップだって」


律くんがケチャップといえばケチャップだ。


いや、そうじゃない!!


「拭いてくれたのはありがと……でも、だったら、ケチャップって口で言ってくれればよかったのに……っ」


「は」


唇を尖らせる私とは対照的に、口元に不敵な笑みを宿した律くんの顔が、一気に不機嫌になった。


あれ……律くん?

これは、やばい……かも?


「律、く……」


そして、ガタッと椅子から立ち上がった。

と、同時にガジッと耳を塞がれた。


「ヒャッ!?」


目を細くして、ツーンとした律くんの顔が近づけられる。