愛は惜しみなく与う【番外編】


「だって……もん」

「ん?なんて?」


杏が何かを言ったけど声が小さくて聞き取れない。なんだ?

杏の顔を覗き込めば、何故か顔が真っ赤


え?



「泉の服は…泉の匂いがするもん。それ着てたら……さっきのこと現実なんやなって思えたから。泉にギュッてされてるみたいやから…」


目の前で俺の服を握りしめたまま俯き、杏はそう言った。
杏の部屋で突っ立って俺は硬直している


でもやっぱり匂いするとか言われるん嫌よな?ごめん。としゃんぼりして自分の寝巻きに着替えるため、服を脱ごうとする。

いや、それはやめて。

てゆうか

もう。なんだよ!


「可愛すぎる。どうしたらいいの?俺まじで頭おかしくなりそう」


杏の頭を引き寄せれば、ベッドに座る杏の頭は、俺のお腹あたりにくる。


「でも、着替えて?」

「うん…ごめん」

「そうじゃなくて!」


元々杏が着ている服は、洗おうと思って洗面所に放っておいたやつだから。ちょっと汚い。


「これじゃダメ?」


これなら、昨日着ただけだし、汚くはない。匂いがあるのかは分からないけど。
今着ている服を脱ぐ