「暇やな」

「そう?俺は割と楽しいけど」

泉はあたしの部屋に入ってキョロキョロしている。
志木と鈴は山積みになってる仕事を片付けると言って、お母様の所へ渋々向かった。

あたしは手伝えるほど仕事は分からん。部屋で休んでおけと言われた。
でも、部屋も特に何もすることない。


「これが部屋なの?風呂ついてんじゃん」

「そーそー。ここから出なくても生きていけるくらいの設備はあるよ」

泉はキッチンもある!と笑いながら部屋を見ている。
驚くほどあの頃と変わらない部屋。

志木の再現度がすごい。


「晩飯まで時間あるよな」

「ほんまに。なんか本題話すタイミング見つからへんかったわ」

「仕方ないよ。お母さんも妹も、久しぶりに会えたからって普通に話したがってたしさ。夜にでも話してみたら」

おいでよ。
やっと2人っきりだ。そう泉は笑顔であたしの手を引いた。そのまま泉の腕に抵抗なく収まる。


「新幹線志木おったもんな」

「な。ほんとびっくりした」


泉がくすくす笑うたび、首元に息がかかって少しこしょばい。


「カメラ多分ないけど探そうかな」


ふと思い出してそう言った。