「今日は泊まっていくのよね?」

「そのつもりしてる。よな?何も決めてないけど」

とりあえず考えずに関西まできた。
色々話せたらなと思って。
東堂組の方に泊まろうと思ってたんやけど……雰囲気的にこっち泊まるんかな。


「俺も泊まっていいんですか?」

「気にしないで。杏の部屋は…志木が元通りにしてくれたから」

少し言葉を詰まらせながらお母様はそう言った。

そうか。あたしの部屋あるんや。

あたしが行方不明ってなって、あたしの部屋にあったものは全部処分されていたはず。
そっか。


「写真も移動させましたよ」


志木はできる執事や。
先の家庭菜園の地下室に大事なものだけ移動させていた。それも戻してくれたんやな。


ごめんなさいね。
そう言おうとするお母様を遮る。


「じゃ、今日泊まろっと」


気まずいよ、正直。あたしはもう別にいいやって思ったけど、多分お母様は1番苦しいと思う。

それでもあたしがここにこうやって来る未来を選んでくれたから。
姿なんて消してあげられた。