「怖かったら何もしないよ。普通に、ハグして寝よう」


俺にとっても未知の世界だから。
まさか今日、こうなるとは思ってなかったから……

ただ


「俺は杏が向き合おうとしてくれただけで嬉しいから。きっと周りにやいやい言われたんだろ?気にしなくていいよ」


持っていた小さいタオルで頭を拭いてやる


杏はいつも真っ直ぐだな。
色々気にしてくれてたんだな。ちゃんと分かろうとしてくれてたんだな。知らなかったよ


「周りに言われたからじゃない」


目だけ見えていた杏は、バスタオルを下げて顔を出した。



「確かにやいやい皆んな言ってきたし、あたしは正直そういうことに疎いとは思う。やけど……嫌じゃない。恥ずかしいけど…でも一緒にいたら…もっと近づきたいって思ったの」


その言葉を聞いて、手を伸ばしてベッド横のライトのスイッチに触れる。



「怖くなったり、嫌だなって思ったら、本気で殴って止めて」


ごめんな、杏



「杏にばかり頑張らせてごめん」



スイッチをオフにすると、部屋は暗くなる


テラスの露天風呂のライトだけが、向こう側で光っている。