母親の気持ちも同じやで



「別に嫌なら無理にとは言わん」

「……急じゃん」

「うん、そやね。あまり時間がなくて」

「どういうこと?」

「朔のお母さん、ずっとこの街に居たねん。でもな、もう少しで引っ越すんやって」

「……近くにずっといたの?」

「うん。朔のいる街に頑張って来たんやってさ。でもまだ心はしんどくて、あんたに嫌われてる思ってて会う勇気もなかったって。せめて近くにいられたらって、この街の心のリハビリ施設にずっと居た」


「………嫌ってない」


「うん、そうやな」


小さくなって下を向いてしまった朔を抱きしめる。



「行っておいで。あたしと泉はすぐそこで待ってるから。朔が望めば、叶うから。会えへんなる前に、早く行っておいで」


ポンと背中を叩いて立たせる


朔は戸惑った顔をしたけど、ふらふらと何かに惹かれるように、歩いて施設の中に入った。


大丈夫、やんな



「なんか、すごいもどかしい」

「そうだな。でも朔ならちゃんと話せるよ。それにどうせ、杏が朔の母親説教したんだろ?」

笑わんといて?説教ちゃうし…多分…