そんな冗談を言う息子に、小さく蹴りを入れる嬢ちゃん。

元気そうでよかった。


胃癌の治療。手遅れなほど進行していたこの身体は、東堂財閥の医療機関に入院させてもらい、驚くほど回復した。


そして成功率の低い手術


受けるつもりもなかったのに、泉や嬢ちゃんに生きろと言われた。
だから、勇気が出た。
数%の確率でも生きれるなら…賭けてみた

そして先日手術を終え、生きている自分の身体に少し涙が溢れた。


こんなにも嬉しいことなのかと。


いつ死んでもいいと思って生きていた。息子にも親らしいことをしてやれず、どんどん崩れていく組を眺めて死ぬんだと思っていた。


なのに

手術が終わり蕪木組に戻れば


息子が会いにきてくれる
息子の友達が会いにきてくれる


こんな良い人生あるんだなって


「おい、親父。まだしんどいのか?」


黙り込む俺を心配そうな顔をして見てくる泉は、どこからどうみても、柔らかくなったなと思う。


「ぱぱちん?大丈夫?」

「あぁ、久しぶりの我が家に少し気を抜いてしまっただけだ」


そう言うと、2人ともにこりと笑う。


さて、


この2人は付き合ったのか?