その2文字は、驚くほどすんなりと口から滑り落ちた。
「え、伽夜?」
彼女、と公言した存在である真生とその男の間に割って入り、視界を大きなカメラを持った男から遮断した。
……っていうか、やっぱり絡まれてるし。っつーか、俺、座って待ってろって言ったはずなんだけど。
などという小うるさい不満は胸の内にとどめる。あとで消化すればいい話だ。
「こいつ、困ってるみたいなのでやめてもらえますか」
一応、丁寧な口調は心がける。以前のような、歩道で暴力を振るおうとした女子どもとは違ってまだ良識はありそうだ。
あの時は、一瞬ブチ切れそうになって違う意味で焦った。中学の頃に素で戻りそうだったから。
「あ、あの、伽夜、」
「……なに」
ちら、と横目で流し見ると、俺の肩越しにひょっこり上目遣いで顔を見せる真生がいて、なんだか喉がしまった。
……まっっじで、俺は今日、たぶん、一日中浮かれているんだと思う。



