「………人の顔と名前覚えんの苦手なんだよ」

「それマオマオも言ってた気がする……」




優しげな顔立ちをして、笑顔が爽やかな、いかにも〝好青年〟な風貌の奴。


俺とは、真逆のタイプ。

だからこそ、すっげえ気になって、気にかかっている。


最近は毎日一緒に帰っているし、バイトも週3に減らしたりと自分の身を犠牲にするようなことを真生は改善してきている。

だからこそ、恋人として過ごす時間を増やしたらどうか、と千井や那吏は言っているけど。



恋人らしいこと、は、正直、不必要だとは思わないけど、でも、必要だとも思わない。

俺にとって氷高真生は唯一無二で、真生にとっての俺も、唯一無二のはず、だから。


………なんて、自惚れ、か。




「………あああっ、くそ、」

「ちょ、ち、ちず急に何?!頭もげるからわし掴むのやめて!!!」




独りよがりの愛、だとか、縛り付ける行為、なんて。

〝恋人〟っていう関係性がある以上、そんなの、どれだけなくそうと努力しても、消し切れるわけ、なかったのにな。