「……とまあ、こんくらい。ほら、次は自分でやってみろ」
「……りょ、りょうかい、です」
スッと背中から離れた熱にホッとするけど、なぜか心がさびしくなるのは、ほんとうにおかしい。
私は、恋とか愛とか、まだよくわからない、のかもしれない。
「あ、上に乗せるときは、ちょっと内側に搾るといいぞ」
「は、はい」
伽夜に言われた通り、気持ち多めで、すこし内側に搾っていく。
慎重に、しんちょうに、しん、ちょうに……。
「ど、う、ですか?」
「…………まあ、及第点ってとこか」
「すごい贔屓目で見て?」
「贔屓目で見て」
疑惑がかかって聞いてみたら、同じ言葉が返された。……私には料理の才能が絶望的にないから仕方ない。
「それで、真ん中にジャムのせるんですよね」
「ああ。はい、これ」
「ありがとうございます……って、わりと今更なんですけど、なんでこんなに材料揃ってるんですか?」
「ほんとに今更だな」



