そう思いながら、ぺらぺらページをめくっていたら。
ふと、目に止まったそれ。
「……あの、伽夜」
「なんかいいのあったか?」
「これ、作れます?」
これ、そう言って指差したのは、マカロンショコラと銘打ってある、よくショーウィンドウの隅っこに置かれているマカロン。
実は、あかねさんがまだ生きていた頃、このマカロンに挑戦して、失敗していたことがある。
結果、その年はマカロンを諦めて無難なチョコトリュフにおさまったんだけど、あかねさんは諦めきれなかったらしく、来年こそは!と言っていたっけ。
……その来年は、残念ながら永遠におとずれることはなかった。
「……マカロンか」
「……あ、もし私に難しいようなら、簡単なもので別に、」
「いや、これでいい。真生が作りたいんだろ」
慌てて別の逃げ道をつくろうとしたのに、それを遮られて、私がやりたいと思ったことを第一優先で実行してくれる。
そんなところが、やさしいと思う。



