今夜はずっと、離してあげない。






「……ということで〜」



その話をした翌週の土曜日。


朝からぐっと腕をまくりあげ。

エプロンはしっかり後ろで固定済み。


しあげに……手に装着された、謎のゴツい物体。



「レッツ……、……チョコクッキング?」

「バレンタインクッキングだろ」



ふたり同じようなエプロンをつけて、侵入禁止令が一時的に解除されたキッチンに乗り込む。



「あの……ところで、この手についてる銀色の大きなものはなんですか?」

「包丁ガード。別名フィンガーガード」

「……ようするに?」

「包丁で指を切らないために子供とかがつけるもの、」

「あの、さすがに指は一刀両断しませんしできませんよ……」



この人は、何がなんでも私に怪我を負わせたくないらしい。



「じゃあ、まずはレシピ決めだな。どれがいいとかあるか?」



レシピ本を見せられても、私に良し悪しなんてわかるわけもないのだけど……。