今夜はずっと、離してあげない。




お母さんも、お父さんも。

実は、必死で生きようとしてくれてたのかな。


痛みと闘い続けて、でも勝てなくて。


どれだけ、無念だったんだろう。



「真生、線香」

「あ、はい」



墓石の前でぽけっとしていれば、伽夜が手際よくお花とお供物をそなえてくれていた。ほんとにはやい。


ビニール袋の中に入っていたお線香を差し出せば、チャッカマンで点いた火が、線香へと渡っていく。


白い白煙をくゆらせて、凍てついた冬の空へと昇っていく煙と一緒に、そこにいるのであろう人へと、目を閉じる。



なんでだろうなあ。

話したいこととか、言いたいこととか、いっぱい用意してきたはずなのに。


ひとりで語りかけるために、来たはずなのに。

何も思いつかない。……いや、ちょっとちがう。


たぶん、絶対的な安心感と、見ててくれてるだろうっていう、勝手な妄想と憶測があるから。

だから、唯一語りかけることがあるならば。




─────だいすきで、あいしてたよ。