「俺の話は以上。質問ある場合は、今なら受け付ける」
「……なら、ひとつだけ、いいですか」
振り返らない、立ち止まらない銀色が、ゆっくりと上下に揺れる。
「……その、返事は、いましたほうが、いいですか」
「………別に、いつでもいい」
「では、今すぐします、ので、止まってください」
茜空は、もう黒に侵食されてしまった。
霊園を照らすのは、スマホのライトと、月と星、それに霊園の向こう側で煌々と輝くイルミネーションだけ。
立ち止まって、おそるおそる振り返った顔は、眉間に皺が寄っていて、唇をぎゅっと引き結んでて。……まるで、何かをがまんしているかのような、そんな表情。
「……やっぱ、お供えしてから、」
「まって」
離れかけた手を、ぎゅうっと握りなおす。
離れないように。離さないように。
「ちゃんと、言います。私の気持ち、全部。……だから、お願いですから、聞くのを、怖がらないでください」



