「……たしかに、〝唯一無二〟だけ、だったんだけどな」
その時、伽夜は困り果てたように、肩をすくめた。
「この手を、ずっと繋いでいたいって、離したくないって思ったら、もうダメだったな」
きゅっと、かすかに指先に力がこもった気がして、思わずおなじくらいの強さで握り返した。
「……それ、は、母親が、世話のやける子供を見るような感情では、ないんですか?」
「……明確な違いは、正直、わかんないけど。すくなくとも、親はこの先ずっと、隣で手を繋ぎながら生きてほしいとは思わないだろ」
そう言った直後。
ふと思いついたように足を止めて、振り返った伽夜は。
「なんなら、いまここでキスしてやってもいいけど」
「……っ?!?!!」
片側の口角だけをつりあげて、意地悪くわらいながら落とされた言葉に、悶絶させられたのは言うまでもなく。
「……ぼ、墓石が並ぶ前でハレンチすぎませんか……」
「それもそうだな」
ふいっと、特に残念がることもなく、すんなりと前を向いてまた歩き出す。
……あ、あぶない。し、心臓が、とびでる、かと思った。
ドキドキしすぎてもはや痛い。
心臓がいつオーバーヒートを起こしてもおかしくないくらい稼働してる。



