今夜はずっと、離してあげない。




「はい?なんですか?」

「……さっきのやつだけど、」

「さっきの……、って、お花の代金のやつですか?あれは絶対に受け取りませんから、」

「いや違くて」



はあ、と軽く息をついた伽夜は、またさくさくと歩き始める。



「……さっきの、母さんに言った、お前が俺の唯一無二かつ、好きな奴、っていう言葉」



ガツッ、とすごい音を立てて、私の手からするりと足元を照らしていたスマホが滑り落ちた。

たぶん、いまの感じだと石畳に直撃しているはず。ただではすんでいないと思う。


けれど、私も私でただでは済んでいないから、ウィンウィンとして見逃してほしい。



「……いま、すっげえ音したけど。スマホ大丈夫か?」

「あ……、……画面は、割れてないみたいです。角がちょっとかけたぐらいで」

「派手な音したから、もっと割れてんのかと思った」



私は別の意味で、いままで落ち着かせていた心がバッキバキに割られました。