「……もうちょっと、あと二駅、がまんな」
ぽんぽん、と頭に二度ふれた手で、顔がもっと熱くなるのがわかった。
というか、私がいまこうなっているのは満員電車のせいではなくて、伽夜のせいなのだけど、それを本人はよくわかっていないらしい。
う、うつむいていなければ。この顔は、絶対、なにがなんでも見せちゃいけない。
……おちつけ。そう、心をしずめて。
いつもひとりだったでしょ。心臓がどっこんばっこん鳴ってるのを鎮めるのも、おてのもの、のはず。
……ふう。まず、好きな人と言っても、その前に〝唯一無二〟という四文字がついていたことを忘れちゃいけない。
そして、ライクなのかラブなのかという謎も残っているし。……うん、ライクの線も大いにあるね。
よし、ちゃんと落ち着いてきてる。
……けれど、まあ、なんとなく腹はたったので。
「いや、なに」
「……べつになんでもありません」
「なんでもないなら頭ぐりぐり押し付けてくんのやめろ。……だからやめろって」
頭をドリルみたいに胸にぐりぐり押し付けて攻撃した。



