今夜はずっと、離してあげない。




普段電車なんか使わないし、凛琉たちと電車に乗ったのを最後にほとんど使っていない。

それでもあの時はこんなに混んでいなかったからよかったものの、人の熱気と密度のせいで、いまは息苦しさを感じるほど。



「引きこもりが電車に乗るとこんな感じなんですね……」

「いや引きこもりではないだろ。活動範囲がかなり限定されてるだけで」



ほんとにぎゅうぎゅう。

満員電車をテレビで見たことはあったけど、見るだけではわからない辛さがあったんだといまならわかる。


テレビを見て、うわあ大変そうって他人事みたいに思ってごめんなさい。私は未熟者でした。この辛さを知っている人と知っていない人では天と地ほどの差があることをいま知りました。



「……真生、だいじょぶか?苦しかったら降りるけど」

「い、いや、あの、はい、大丈夫、です」



知り合いと満員電車に乗ると、すごい、距離が間近になることを、体験してはじめてわかつた。


吐息を感じるほどの距離とか、腰に回されてる手とか、うん、もう、なんか、頭パンクしそうなのは確か。