俺は、多くを語らなさすぎた。
言葉にするのが、下手だった。
だから、黙っていた。
そんなとこをして、何も解決するわけがないとわかっていたにも関わらず。
「一緒にいる時間が減っても、絶対に一緒に食事をしてくれるのが、うれしかった」
もう届かない。もう言えない。
言いたかった言葉たちは、この場ではなんの意味も持たない。
けれど、言いたかった。
口からするりと滑り出してくる言葉たちは、きっと、声となって出ることを望んでいた。
「母さんがいるところが、おれの、帰りたい場所、だった」
帰る場所なんて、帰るべき場所なんて、いらない。
俺が欲しかったのは、あり続けて欲しかったのは、帰りたい場所だけだった。
「……母さんが、俺がいない方がしあわせになれるなら、出て行っても、よかった」
俺のかげかえのない、唯一の、帰ってきてほしい人だった。



