今夜はずっと、離してあげない。





たぶん、彼女は世間一般で言えば、養護教諭として、大人として、子供を正しく導く立場としては、失格だったのだろう。


けれど、生徒にとっては、おそらく救いだった。



氷高あかねは、授業に参加することを強制しなかった。ただ、皮肉たっぷりに毎回こう言う。



「えー?授業受けておくにこしたことはないと思うけど。だって中学生だよ。このあと受験もあるし。あ、頭いいならサボっても別にいいと思うよ!そんなヤツらはコレだけどね」

「保健のセンセが笑顔で中指立てるもんじゃねえよ……」



みたいなことは毎回サボる奴に言っていたらしい。


それにはもちろん、俺も含まれていた。


その行為に、どれほどあの頃の俺が驚かされたことか。


態度から、容姿から、他人とは違うということを自ら示していたのに、どこか他人と同じように接してほしいという矛盾した渇望のようなものがあったのだと思う。



自分勝手すぎることだと思う。身勝手だとも。



けれど、当時の俺にとって、それが何より嬉しくて、安堵できるものだった。