今夜はずっと、離してあげない。





その女性はびくりと肩を震わせて、恐る恐る私たちを振り返る。

とても、美麗な顔立ちだった。


千井はその人がお客さんだと思ったのか、さっきの駄々っ子のような態度から打って代わり、ニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべる。




「どうされたんですか?あ、誰かお探しのようなら一緒にお入りしますが!」




千井の変わり身、ほんとすごい。

ここまで対応を使い分けられるの、最早尊敬に値するよ。




「あ、い、いえ。大丈夫です。ちょっとだけ、一目見たかっただけなので」




そう言って淡く微笑んだ女性は、なんだか見覚えがあるような気がした。


どこかで見たような、微笑み。
……ううん、違う。微笑み方。


柔らかくカーブを描いた眉に、少しつり目気味の漆黒を混ぜ込んだような瞳と、腰まで伸びた髪。


薄い唇に、控えめに口角が上がる、その動き。




…………………………あ、





「……もしかして、千住伽夜さ…んの、お母さんじゃないですか?」