すっかり力の抜けてしまったわたしは、カナに手を引かれて庭の奥に置かれたテーブルセットまで連れて行かれた。

「準備するから、ハルは座ってて」

 テーブルにバスケットを置くと、カナはイスを引いてわたしを座らせて、バスケットを開け中身を並べていく。

 ワイングラス、ワインボトル、お皿、それから、サンドイッチ、サラダ、スープポット、そして、果物がいっぱい乗った小ぶりのホールケーキ。

 日差しを避けて木陰に置かれたテーブルの上で、ワイングラスに木漏れ日が当たってキラキラと光る。

 まるで物語のワンシーンのようだったのに、ワインボトルから注がれたのは、なんと麦茶。思わず笑うと、カナは

「ワインのが良かった?」

 と言った。その悪戯っ子のような目つきに、不意に去年の失態を思い出す。

 知らずに、葡萄ジュースだと思ってワインを飲んでしまい、いつもの自分なら絶対に口にしないような事を言ってしまった……気がする。

 本当のところ、あまりよく覚えていない。
 だけど、後から、自分が何を言っていたかを教えてもらって、穴があったら入りたいと思った、あのどうにも身の置き所のない気持ちは忘れられない。

 恥ずかしさに真っ赤になって俯くと、

「ごめんごめん」

 とカナは慌てて言う。なのに、次の瞬間、

「でも、あの時のハル、ものすごく可愛かった!」

 なんて力説するものだから、もう、どんな顔をしたら良いのか分からなくなる。