庭に出ると、空を縁取る青々とした樹々や色とりどりの花が目に飛び込んできた。
 青く澄んだ空には雲一つなく、夏の日差しは強いけど湿度も気温も低く、高原の空気はとても澄んで綺麗だった。

 ああ、去年と同じ空の色だ。
 あの花壇に咲き乱れる花も、たくさんの樹々も……。

 不意に、この庭で立ち働く制服を着た人たちが、庭に並べられたたくさんのテーブルが、銀色の蓋に隠された山のようなお料理が、テーブルを飾る色鮮やかな花々が脳裏に浮かんだ。
 この庭に披露宴の準備がされているのを見て本当に驚いた、あの日の気持ちが静かによみがえる。

 家族だけで行う予定だった教会でのお式に、あんなにたくさんの人が参列してくれただけでも驚いたのに、別荘に戻ったら披露宴の準備までされていた。

 沙代さんと庭に出て、三人で写真を撮ってもらった。
 カナはお色直しのドレスまで用意してくれていた。
 お式と披露宴で、本当にいっぱいもらった心からの「おめでとう」。そして、たくさんの笑顔。

 大切な人たちの幸せそうな、底抜けに明るい笑顔が浮かんでは消える。

 ……あれから、もう一年。

 二度の手術も乗り越えて、二人一緒に初めての結婚記念日を無事迎えることができた。

「……懐かしいね」

「うん。……もう、一年か」

 カナも感慨深そうにそう言った。
 自然と、本当に自然と言葉が溢れ出た。

「ありがとう」

「ん?」

「プロポーズしてくれて、ありがとう」

 気が付くと、わたしは前を向いたまま、カナの手を握っていた。
 今日もカナの手はとてもあたたかい。

「わたしを選んでくれて、ありがとう」

 隣に立つカナを見上げて、そう言うと、

「え? ハル?」

 カナはわたしの方を向いて、目を見開いたまま固まっていた。