「愛してる」

 囁くようにそう口にすると、カナは嬉しそうにしてくれながらも、

「今日はどうしたの? 珍しく大判振る舞いだね」

 不思議そうにそう言った。

「……お誕生日だから?」

 そう答えると、カナは声を上げて笑う。

「後、……二人きりだから」

 続けてそう言うと、カナはわたしの頭をそっと抱き寄せた。

「ありがとう。本当に嬉しい。誕生日は一年に一回だけど、二人きりにはいつでもなれるね」

「ん。……カナ、いつだって、口にしなくたって、大好きだよ」

 小声でそう言うと、今度はカナも

「オレも大好き。世界で一番愛してる」

 と返してくれた。

 カナが手元のスイッチで部屋の灯りを消した。

 そのまま、カナのぬくもりに包まれて、今日幾度も思った、幸せだなという気持ちに満たされて、わたしはじきに眠りの世界に入る。

 明日も、明後日も、そして365日向こうの今日も、このぬくもりを感じられますように、と祈りながら。


(完)