「明日からは、にぎやかになるな」

「……だね」

 カナと水入らずなのは今日までで、明日にはパパとママ、お義父さまとお義母さま、それから、晃太くんにお兄ちゃんも別荘入り予定。

 賑やかになるのはとても嬉しい。でも、カナと二人だけの静かな時間がほとんど寝ているだけで終わってしまったのは、何だかとても寂しかった。
 みんな、気を使って、遅めに来ることにしてくれたのにな。

「明兄とか、邪魔してきそうだけど、どっかで時間見つけて二人でデートしようね」

「……ん」

 思わずクスッと笑うと、カナが肩をすくめた。
 お兄ちゃんが邪魔をすると言っても、ちょっとばかりカナをからかうだけで、それ以上の事はない。

「デートもして、……で、別の日に、みんなで一緒に遊びにも行きたいね」

「子どもの頃みたいに?」

「うん」

「……そうだな。二人とも、来年には就職だもんな」

 そう。
 来年からは、お兄ちゃんと晃太くんは、きっとこんな風に長期間のお休みは取れなくなるから。

 お兄ちゃんの勤務先は病院できっと激務だろうし、晃太くんだって会社員一年生。おじさまの後を継ぐための修行先だと聞くから、お休みたっぷりの楽な仕事だとは思えない。

「……わたしたちは、また来年もあるもんね」

 そう言うと、カナはとても嬉しそうに笑って、わたしを抱きしめてくれた。

 来年。

 365日先のこと。

 口にして、その重みを感じる。

 一年先の事なんて、本当は分からない。

 来年の今日、十九歳のわたしは、この場所にいられるかな?

 ……だけど、二十歳の壁は、まだその向こうだから。

 来年は、きっとまだ、カナの隣にいられるのだと、そう信じたい。