お風呂も済ませて、後は寝るだけと言う夜の寝室。

 あ、そうだ。
 大切なことを忘れていた。

 クローゼットにカナへのプレゼントを取りに行くと、カナもくっついてきた。そんなところも去年と同じで、何だかおかしくなる。

「カナ、……遅くなったけど、プレゼント。改めまして、お誕生日おめでとう」

 去年も今年も、結婚式や結婚記念日に気を取られて、渡すのが夜になってしまった。
 結婚も大切な記念日だけど、今日はそれよりもっと大切な、カナの生まれた日。来年はカナのお誕生日をしっかり祝おうとわたしは心に誓う。

 深緑のシックな紙に包まれた小ぶりな箱を手渡すと、

「わ、ありがとう」

 まるでプレゼントの存在なんて考えてもいなかったと言う感じのカナ。こんなところまで去年と同じだった。

「何だろう? 開けていい?」

「もちろん」

 頷くと、嬉しそうにカナが包み紙を開く。

 今年のプレゼントは腕時計にした。

 最近はスマホがあるからって腕時計をしない人もいるみたいだけど、カナは必ず着けている。今、使っている腕時計はお義父さまとお義母さまから高校の入学祝いに頂いたものだと思う。だから、今あるので充分に事足りているのは知っていた。

 だけど、もう一つくらいあっても良いよね?

 そう思って、カナが道場に行く日にパパに付き合ってもらって選びに行った。

「ダイバーズウォッチだよね? カッコいい! ありがとう、ハル!」

 ベゼルもベルトも黒のダイバーズウォッチ。カナは海に潜る趣味はないけど、海の中で見るという特性上、とても丈夫で視認性が良いと聞いて、これを選んだ。