「ハルはどこか行きたいところ、ある?」

「んー。……教会、行きたいなぁ」

 そうして、神様に無事、結婚一周年を迎えられたと報告したい。

「後、小さい頃に遊びに行った湖のある公園とか」

「行ったね〜! 懐かしい」

「それから、なんて言う名前だっけ? 古い洋館とかあったよね?」

「あるある。本当にデートコースだな」

 そう言われると、恥ずかしくなる。

 でも、日々の生活にいっぱいいっぱいで、わたしたちはろくにデートもしていない。しかも気軽に旅行に行ける身体でもないから、新婚旅行すら行っていなくて……。
 せめて、いつもの別荘とは言え、雰囲気くらい味わいたいなって。

「……イヤ?」

「まさか!」

 カナはわたしが何を言っても、大抵は嬉しそうに聞いてくれるから、逆に心配になる。

「ハルと一緒に行けるなら、オレはどこでもすっごく幸せ」

 今日も、とろけるような笑顔でカナは言う。

「あ、誤解しないでね。どこでもいいって言うんじゃなくて、ハルと一緒に見る景色は、どんなものでもオレにとっては最高の宝物って意味だからね?」

 恥ずかしくなるようなストレートなカナの言葉。でも、何でかな。今日は素直に受け取ることができた。

「ありがとう」

 にこりと笑うと、カナも幸せそうに笑い返してくれた。

「お嬢様、お食事はもうおしまいですか? デザートにします?」

 沙代さんに言われて器を見ると、小ぶりなお椀に卵がゆが半分くらい残っていた。

「ハル、無理しないでいいからね。食べれるだけね?」

「うん。……後少しだけ食べようかな」

 動いていないからお腹は空かない。だけど、食べなきゃ栄養が足りないのも本当。少しでも食べるようにしていかなきゃ、夏休みの後半もベッドで過ごすことになりかねない。

「頑張るね」

 思わず言うと、

「頑張らなくて良いから」

 とカナが笑った。


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