ふと目が覚めると夜中だった。

 ドアの隙間から漏れ入る光もなく、生活音も聞こえてこない。とても静かだった。
 そして、フットライトの薄明かりに照らされるのは、いつもと違う天井や壁だった。

 ……ああ、別荘だ。

「ハル? どうした、大丈夫?」

 隣のベッドからカナの声がした。

 今、目が覚めたばっかりなのに、どうしてカナは気が付くのかな?

 いつもの事だけど本当に不思議で、そして、わたしを気に掛け過ぎて、また春のインフルエンザの時のようにカナが体調を崩さないかが心配になる。
 思わずカナの方に手を伸ばすと、カナはスッと起き上って、ベッドの上をわたしの方ににじり寄る。

「気分悪い?」

 ここ数日、体調が今一つだったので、カナは気を使って隣のベッドに寝ていた。
 隣と言っても、二台のベッドは隙間なくくっつけてあるけど。

「ううん。大丈夫。なんか目が覚めただけ」

 別荘に着いたのは3日前で、夏の暑さや試験疲れから元々体調が良くなかったのもあり、到着と同時にすっかり寝込んでしまった。

 例年、寝込むのは到着した日と次の日くらいだったのに、今年はいつも以上に回復に時間がかかってしまい、カナには心配をかけたと思う。
 それでも、昨日には起きて、食堂でご飯を食べられるくらいにはなった。
 連日猛暑の自宅とは違い、この別荘の辺りは春や秋くらいの気候で涼しくて過ごしやすいから。

「本当?」

 カナはわたしの前髪をそっと手でよけると、コツンとおでこを合わせた。

「熱はないね」

「ん。大丈夫だよ。……昼間、寝過ぎたからかな?」

 本当のところ寝過ぎなんて可愛いものじゃない。体調の悪い時のわたしは、コアラやナマケモノと勝負できるくらい眠ってばかりの気がする。
 そんな事を想像してクスッと笑うと、カナは布団越しにギュッと抱きしめてくれた。

「元気そうで良かった。でも、ハル、まだ夜中だよ。もう一眠りしよ?」

 夜中……今、何時だろう?
 もう、夜の十二時を過ぎたかな?

「どうした? 何か気になる?」

「……今、何時かな?」