千瀬っ……。

 気づけば夜は開けていて、周りは涙でびしょ濡れだ。

「千瀬ぇっ……」

 そうかすれた声で私は千瀬の名を何度も呼ぶが、千瀬はこの場に来てなんてくれない。

 再び涙が溢れる。

 すると、ガチャッとドアが勢いよく開いた。

「だぁっれ……?」

 瞳に映ったのは、大好きで、1番輝いて見える人、千瀬だった。

「ちとせ……?」

「……」

 無視しないでっ……!また優しい笑顔を見せて欲しい……!

「……無視しないで……!」

 私は背の高い千瀬にギュッと抱きつく。

「……」


 どうして……?

 ああっ……そろそろ幻覚まで見えてきた。

 千瀬が私に優しかった頃の幻覚だ。