「いらっしゃいませ!」

中学生だし、初めてお店で働いた。

接客なんてやったことがなくて、不安だったけど、やってみれば、意外と器用にこなすことができた。

「すごいですね。飲み込みが早いですし、仕事も丁寧です」

麗於さんが私に言う。

「ありがとうございます!」

ピアノじゃなくても、私にだってできることがある。

案外、こう言う仕事でも食べていけるかも。

「ねぇちょっと、また頼んだのと違うんだけど!」

「す、すいません!」

颯太君がお客さんに怒られていた。

今日だけでも、何回も同じ光景を見た気がする。

怒られて、颯太君の手が震えている。

「ちゃんとメモ取ったの? 私はこれを頼んだんだけど?」

お客さんがメニュー表を指差す。

「あの、えっと……本当にすいません」

颯太君は泣きそうな顔になる。

あのおばさん、あんなに怒鳴らなくてもいいのに。

見てられなくて、私が割り込んだ。

「大丈夫。あとは私がやっておくから」