そのとき、

「っ…!!!」

凄まじい音色の旋律が、鼓膜をとらえる。

なに、この雑音!?

手が止まり、苦しさのあまり、鍵盤に体をもたれる。

体感では、鼓膜が破れ、血が流れた気がした。

でも、みんなは突然、苦しみだした私を不思議がるだけ。みんなには、聞こえてないの?

……そっか。“死の旋律”だ。

私にしか聞こえない。

それも、今までの音とは訳が違う。

苦痛のあまり意識が遠ざかり、ピアノチェアから転がり落ちる。

「琴葉っ!!!!」

ルナが叫ぶ。地面に落ちる前に、私を支え、抱き締める。

「ルナ…」

強烈な頭痛とともに、意識が遠ざかっていく。

そっか。見放されてたんだ。

私はとっくに、ピアノの神様に。

騒然とするお客さんの中から、野次のような声も聞こえた。

そのまま私は、気を失ってしまった。