加賀屋くんはわたしの表情の変化に気づくことなく話を続ける。



「わりと有名だった3年の先輩がフラれた、とか。俺も疲れててよく覚えてねーんだけど」

「ええと、……まあ、ソウ、カナ」

「なんでカタコト……うわ、汗すげーぞ」


怪訝そうにこちらを振り向いた加賀屋くんが、わたしの顔を見てぎょっとした。



正直、あのときのことはあまり覚えてなかった。


ただ記憶にあるのは、各方面からかかるプレッシャーのあまり泣いてしまったことだ。

もちろん先輩がじゃなく、わたしが。


それを見ていた人たちからは大ブーイング。

そりゃそうだ、フィナーレを台無しにしたようなものだし。


『ぶりっ子』とか『高嶺の花』とか、観客席からいろいろ投げかけられて。

そのレッテルは文化祭が終わってしばらくたっても貼られてたんだっけ。